これは大学時代の当直のお話です。
深夜に救急患者がこられました。
それが仕事だろ
症例

どうされました?

痛てー。助けてくれ。
数時間程度の処置
その次の日

具合はいかがですか。

痛くないです。じゃあ治ったんで帰ります

昨日の処置の合併症が起こる可能性もありますし、炎症もまだ残っているのでまだですよ。

それが仕事だろ
これはいままでかなりショッキングな出来ことでしたね。
病気としては命に別状はなく、
夜間にやらないでも日勤帯になってから複数人でやったほうがよい処置です。
痛みもかなり強かったので辛いだろうなと思い、リスクもありつつ一人で数時間かけて頑張りました。
処置は問題なく終わり、痛みも劇的に改善しました。
メインの治療としてはこれで終わりになりますが、
通常処置の合併症や根本的な治療、再発が起こらないか炎症のを抗生剤で落ち着かせるなど様子を見ます。
医師としては自分で治療開始したものですねある程度は責任をもって経過をみたいのです。
そんな中のまさかの退院宣言。
少し認知症も入っていた人ではあるのですが。。。
リスクを冒して治療にあたったのですし少しはこちらのいうことを聞いてほしかったのですが
それに対してまさかの返答。その一言に深く傷つきました。
医師として、当直中であっても苦しんでいる患者がいれば、もちろん対応するのが職務です。
医師の半分はやさしさでできています。
とまでは言いませんが医療は医師の犠牲や温情、やりがいなどで成り立っている部分があります。
大学病院の当直なんて業務に対しての報酬という点では最低賃金レベルです。
ほかの日に休みやるから特別給料はないなんてところもあります。
それでも、「誰かのためになるなら」と働いている人は少なくありません。
その温情が、「当然のもの」と踏みにじられると、心が折れそうになるのです。
医師だって人間です。
機械ではないのです。よかれと思ってやったことを否定されることほど嫌なことはなかなかないです。
この症例では家族も入れて改めて説明させていただきましたが理解はしていただけず、退院となりました。
以降はどうなったかはわかりません。

解決策
- 処置前によく説明を聞いておく
- 不安があるときはお伝えください
- 信頼関係を築きたい
処置前によく説明を聞いておく
事前にこういった処置を行う、処置のリスク、処置後の予定や入院期間を説明は行っております。
納得のうえで同意書にサインをいただいています。
ご本人は痛くてそれどころじゃないときは大切なところだけ聞いてもらいあとは家族にお伝えすることがあります。
同意書にサインした以上本来であればある程度強制力があるはずなのですが
医療での同意書というのはどういうわけか効力を持たないことがあります。
この話はまたいずれします。
不安があるときはお伝えください
いつまで入院になるのか分からない、いまどういった状態が分からない
そういった不安から逃げ出すために退院したいということはあるかと思います。
できるだけそうならないようにちょいちょいと説明を行っております。
説明がないときは医師、看護師に説明を求めましょう。
ただし、今すぐに説明を求めたり毎日などは時間的に難しいです。
予定を検討して日程調整しますのでお待ちください。
信頼関係を築きたい
医師も、患者さんの言葉に勇気づけられることがたくさんあります。
「ありがとう」「助かりました」の一言だけで、夜間のつらさが報われることもあるのです
だからこそ、一方通行ではない信頼関係を、私たちは大切にしたいと思っています。
まとめ
夜間の医療は、限られたリソースの中でできる限りのことをしています。
医師も看護師も、「誰かを助けたい」という思いで働いています。
そんな中で、患者さんやご家族からの「ありがとう」や「よくなりました」の一言に、私たちは大きく励まされます。
医療は、命を守る営みであると同時に、人と人との関係です。
お互いに思いやる気持ちを忘れずにいられたら、それが何よりの治療だと思っています。
それではお大事にどうぞ。



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