これは大学時代の外来のお話。
がんの再発がありこれから抗がん剤を行うときのこと。
一番いい治療を
症例

抗がん剤はこの薬を使っていきます。

分かりました。

何か質問はありますか。

どんなにお金がかかってもいいので
一番いい治療をお願いします。
ご自身のことですからどんなにお金がかかっても効果がある治療を受けたいということですね。
結論から言いますと
提案した治療が医師の考える最高の治療です。
今の病気の状態、体力、家族背景などから今現在最適と考えられる治療を提供しています。
”標準治療”とお話することがありますがお金を出すともっといい治療がある、というわけではございません。
日本の医師は病気のガイドラインをもとに治療方針を決めております。
これは各学会から発行されているものでして、
各疾患の権威たちが発行された論文や海外のガイドラインなどを参考にしつつ決めております。
「この国」では「最新」ガイドラインに従った治療が標準治療でありこれ以上もこれ以下もないのです。
国から「認められている」治療であり、保険適応の治療となります。
ただこれはあくまでも「この国」限定で「最新」になっている場合です。
逆を返せば
- 他の国では受けられる治療がある。
- 最新情報についていけていない医師、施設もある。
- 保険適応外の治療がある。
ということです。このあたりは金銭などによってより良い受けられる治療は可能性はあります。
他の国では受けられる治療がある
多いのは薬剤です。多くは海外で許可されたが日本で適応になるにはタイムラグが発生します。
海外ではもう使えるけど、日本ではまだ、ということがあります。
ただし印象ではありますが保険を抜け出してでも薬を使う意義というのは低いかと思います。
日本で使うことは難しいですし、誰も保証はしてくれません。日本人に合うかどうかも分かりません。
例外として他の国で有効と思うのは臓器移植です。
日本では国民性からなのか脳死移植の件数は少ないです。
海外での方が圧倒的に多く行われています。ただ滞在を含めて本当にお金がかかります。
最新情報についていけていない医師、施設もある
ガイドラインは数年に一度更新されます。
大きく変わることはなかなかないのですが少しずつ変更されていきます。
昔学んだことが正しいと信じ、情報が更新できない人がいます。
医師も同じです。今では誰もやっていないことをいまだに行っている医師はいます。
残念ながら開業医に多いです。
一人きりですとだれも新しい情報は教えてくれないし間違いを正してはくれません。
この辺りは自分も気を付けたいことです。
医師はずっと勉強なんですよね。
保険適応外の治療もある
「現在」まだ認められていない治療もあります。
ただしこれは国から安全性、有益性を担保されていない治療になります。
将来認められて当たり前の治療になることもあります。
ただ詐欺のような治療で多額の金額をせしめようとすることもあります。
例えば某芸能人が金の延べ棒でさする治療がありましたよね。
さすがにこれは一般の人でもおかしいと思うでしょうがいざ自分が同じ立場にいると
どう考えるでしょうか。
ちょこっとでも改善になるのであれば多額のお金を出しても治したい、となるでしょう。
治療が正しいかどうかを判断するのは難しいのです。

解決策
- 標準治療を理解する
- セカンドオピニオンを利用する
- 情報の信頼性を確認する
標準治療を理解する
まずは主治医が提案する治療内容をしっかり聞きましょう。
不安や疑問は遠慮せずに質問して大丈夫です。
「効果はどのくらい?」「副作用は?」「生活はどう変わる?」など、
具体的に聞いてみましょう。
ご家族と一緒に話を聞くと安心できます。
セカンドオピニオンを利用する
「この治療で本当にいいのかな?」と不安になったら、他の病院で意見を聞くこともできます。
大学病院やがん専門病院ではセカンドオピニオン外来を設けています。
複数の医師の意見を聞くことで納得感が得られます。
情報の信頼性を確認する
インターネットやSNSには正しい情報も間違った情報も混じっています。
「高額な自由診療」「海外でしか受けられない治療」などは注意が必要です。
治療を決めるときは、信頼できる医師・学会・公的な医療情報サイトを参考にしましょう。
また画面先の人間ではなく目の前に医師と相談しましょう。

まとめ
どんな治療でも受ける、受けないはご本人が納得すればどちらでもよいかと思います。
ただ、できれば「やっぱりこうしておけばよかった」と後悔してほしくありません。
私たち医療者としても「ここまで頑張れた」「納得できた」と思っていただける治療を一緒に考えていきたいと願っています。
どうか、インターネット上の「うまい話」や根拠のない高額な治療には惑わされず、
信頼できる情報と医師の説明を大切にしてください。
あなたが安心して治療を受けられるように、私たちも全力で支えていきます。
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