これは大学病院時代のおはなし。
手術を行ったもののがんが進行しており中止になったときのこと。
手術しなければよかった
症例

残念ながら病気が進行しており病気の切除はできませんでした

そうですか。。。。

これからの治療は抗がん剤が中心になります。

こんなんになるなら手術しなければよかった
手術でおなかを切ったあと、がんが進行していたため切除困難または切除意義がないため
手術は中止となりました。
外科医としてのこの言葉は本当にショックでした。
残念ながら結構あります。
手術前にもこのような事態にはきちんと説明を行っております。
手術は治療のみならば診断目的を含んでおります。
最初から進行を確かめる目的で行う手術を試験開腹術といいます。
術前に多数にわたる検査を施行していますがいまの医療では限界があります。
ではなぜ検査をしても分からないのでしょうか。理由は以下になります。
注意:これは消化器がんにおけるものです。他のがんでは微妙に異なるポイントもあります。
- 病変が小さい
- 検査してから進行している
- 検査の判断が不十分
病変が小さい
あまりにも病変が小さいとCTなどの画像検査では映りません。
腹膜播種と呼ばれるおなか全体に広がってしまったものは
1-2mm前後の病変ですので見ることはできません。
おなかを開いてからこの腹膜播種があって手術での根治治療をあきらめるということはあります。
病変を取り切ることはできませんし、
この飛び散っているという状況が目に見えるレベルでなく全身に広がっているということになります。
ただ病気によっては出血を予防、食べ物の通り道の確保目的に病変を切除することもあります。
残念ながら予後は変わらないです。
検査をしてから進行している
病気は日々進行しています。
数週間前の画像検査ではなかった転移が見つかることもあります。
検査の判断が不十分
がんは進行してくると周りの臓器に進んでいきます。
一緒に切除することによって取り除けることもありますが病変の進行場所によっては切除できないことがあります。
大血管であったり、すい臓であったりです。
画像では「接しているだけ」と見えても実際には浸潤をしていて切除はできないと判断されます。

解決策
- 手術中止になる可能性を頭に置いておく
- 次の治療に前向きになる
手術中止になる可能性を頭に置いておく
上記以外にも中止になる可能性はいろいろあります。
合併症で継続することができなくなった、薬でアレルギーが出てしまった、災害が発生した。
手術に対して希望を持つのは当然ですがどこかで手術中止になる可能性を考えておいてください。
治療に絶対はありません。
次の治療に前向きになる
なかなか割り切れないものですがいつまでも考えずに次の治療に目をやりましょう。
抗がん剤がよく効けば再び手術のチャンスが訪れることもあります。
立ち止まらず、次の一歩を踏み出すことが大切です。
まとめ
実は手術が中止になる可能性が高いな、と思うことは多々あります。
それでも手術を行うのは楽観視しているわけではなく、実際にみてどうなのかを確かめるため。
手術でとれることもあるし、よくない予測通り中止になることもあります。
それは患者さんと同じで我々も希望をもって挑んでいるからです。
医療者はいつでも全力で治療に打ち込んでおります。
患者さんがその治療についてきてくれるとより良いレベルで治療を行えると信じています。
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