これはクリニック外来でのお話。
高血圧でかかりつけの方のお話。
薬ふやしたくないです
症例

こんにちわ。自宅では血圧はいくつですか。

〇〇/〇〇くらいです。

ちょっと高めですね。降圧薬を増やしましょう。

あ、いや、ちょっと。
薬はふやしたくないです。
もう少し様子みさせてください。
高血圧や糖尿病、脂質異常症などの特に症状のない生活習慣病で言われます。
そうおっしゃる患者さんは少なくありません。そのお気持ちはよくわかります。
薬が1つ増えるということは、
「病気が進んだのではないか」
「副作用が心配」
「飲み続けるのが大変そう」
──そんな不安につながるのだと思います。
でも、生活習慣病をそのままにしておくと、
脳卒中や心不全、腎臓病といった重大な病気につながる可能性があります。
薬は、将来の病気を防ぐための予防の一手でもあるのです。
儲けを増やしたいから薬を増やすのでは、と考える方がいらっしゃいます。
医療のことは患者さんにとっては見えにくい世界ですから、疑問や不信感を持たれるのも当然です。
ですが、多くの開業医にとって、薬を出しても直接的な「儲け」にはほとんどなりません。
特に院内処方ではなく「院外処方(処方せんを出して調剤薬局でもらう方式)」の場合、
薬の利益はクリニックに入りません。
薬を増やしても、診察報酬に差が出ることはないのです。
むしろ私たち医師が薬を勧めるのは、将来起こり得る大きな病気を未然に防ぐため。
高血圧によって引き起こされる脳卒中や心筋梗塞は、ある日突然、人生を大きく変えてしまいます。
それを「防げるなら防ぎたい」と思っているだけなのです。

解決策
- 改善させるように努力をする
- 素直に薬を飲みましょう
改善させるように努力をする
“様子を見る”というのは、何もしないことではありません。
治療は薬のみではありません。
食生活、運動によるものが大きいです。
こういった「自分でできる対策」をしっかりやったうえでの“様子見”なら、
医師も納得しますし、薬を増やさずに済む可能性だってあるのです。
「前と同じ生活を続けて、数ヶ月後にやっぱり血圧が高かった」
それでは“様子を見た”のではなく、“放置した”だけになってしまいます。
自分で様子を見たい、と申すのであれば改善させるための努力を行いましょう。
素直に薬をのみましょう
いままでの経過や生活スタイルを見て改善は難しいのでは、と思われる方もいます。
そんな場合は、、、、おとなしく薬を飲みましょう。
薬を飲むことは、敗北でも妥協でもありません。
むしろ、未来の自分の体を守るための選択です。
生活習慣病自覚症状がほとんどありません。
でも放っておくと、脳卒中・心筋梗塞・腎不全といった重大な合併症のリスクが確実に高くなります。
薬を使うことで、そのリスクを確実に減らすことができる。
これほど明確に効果が出る予防医療は、実はそんなに多くないのです。
「できる限り薬を使わずに健康を保ちたい」という気持ちはとても大事です。
ただし、必要なときに必要な薬を使うことも、立派な“健康管理”の一部です。
どうか「薬=悪」と決めつけず、
自分の体に合った方法で、無理のない健康管理を一緒に考えていきましょう。
まとめ
「薬を増やすかどうか」はゴールではなく、通過点です。
本当に大切なのは、自分の体と真剣に向き合い、どう守るかを選ぶこと。
生活を変える努力も、薬を使う判断も、どちらも立派な自己管理です。
焦らず、無理せず、一緒に健康を守っていきましょう。
それではお大事にどうぞ。
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