これはクリニック時代のおはなし。
今日の朝から咳がでるとこられた患者さんのこと。
診断間違いですよね
症例

こんにちわ。今日はどうしました?

今日の朝から咳がでるんです。

他の症状はありませんか?咳のひきはじめですかね。お薬だしておきますね。

ありがとうございます。
後日

診断間違いをされました。
診察後より熱が出てきて倦怠感も強くて後日別の病院にかかったら
新型感染症と診断されました。
とんだヤブ医者です。
正直に言います。ぐさっときました。
診断間違いをされた。ヤブ医者だと。
文字で見るときつい。でも、面と向かって言われなかっただけ、まだマシかもしれません。
もちろん、こちらも手を抜いたつもりなんて1ミリもありません。
朝から咳だけ、他の症状はなし。体温も平熱。呼吸音も特に問題なし。
その時点では、いわゆる「咳の風邪のはじまり」にしか見えませんでした。
でも——
その後に発熱。倦怠感。
そして別の医療機関で「新型感染症(いわゆるコロナ)」と診断された。
結果だけを見れば、たしかに「診断間違い」です。
でも、当時の情報だけで、あの診断を避けることができたかといえば…自信がありません。
医療って、あとからなら何とでも言えるんです。
後医は名医という言葉があります。診断は情報があればあるほど優位になります。
この状態だけで診断できる医師はおそらくはいません。診断できる、といっている人こそヤブかと思います。
薬を出して様子を見る——それが現場での「現実的な選択」であることも多いのです。
患者さんの立場からすれば、具合が悪くなって他院で診断がついた以上、
「最初の医師が間違えた」と感じるのは当然のことでしょう。
私はその想いを否定するつもりはありません。
ただ、声を大にして言いたいのは、
「すべての誤診が怠慢や不勉強から来ているわけではない」ということ。
むしろ、その一言の裏で、眠れない夜を過ごしている医療者がいることも、知っていてほしいのです。
じゃあ医師としてどうすればよかったのかとなると
「今はまだ診断しきれない部分があります」と、正直に伝えるようにしています。
「熱が出たり、だるくなったら、すぐまた来てくださいね」
そう一言添えることで、防げるすれ違いもあると信じて。
誰もが満点の診療をできるわけではありません。
でも、せめて不信感ではなく、「信頼」で診察室を後にしてもらいたい。
そんな想いを込めて、今日も診療しています。

解決策
- 症状の変化は再診・相談する
- セカンドオピニオンをためらわない
- 「診断名」や「処方薬」について、その場で質問する
症状の変化は再診・相談する
ちょっと様子を見ようかな、と思いがちですが
症状が悪化したときや追加で症状がでたときは再度受診することが大切です。
医師は初診時点の情報だけで判断しています。
情報が追加されることで、まったく違う診断が見えてくることもあります。
セカンドオピニオンをためらわない
別の病院にいくのは失礼では、と感じる必要はありません。
診断が不安なとき、または治療がうまくいっていないときには、
別の医師の意見を聞くことは当たり前の選択肢です。
休みなどであれば致し方ありませんが一報入れていただけると
後学に役立ちますので教えていただけるとありがたいです。
「診断名」や「処方薬」について、その場で質問する
どんな病気と判断されたのか、どうしてその薬が出たのかを聞くのは大切な権利です。
仮に別の病院に行くときにもその方が話がスムーズに進むかと思います。
診断名、処方薬を理解していないまま帰ると、
不安が残り、あとで「なんであの薬だったのか?」と疑問になることもあるかもしれません。
まとめ
医療はチームプレーです。
医師だけががんばるのではなく、患者さんも一緒に「伝える」「聞く」「疑う」ことが大切です。
診断の正確さは、患者さんとのコミュニケーションの質に大きく左右されます。
それでも、間違いが起きたときには真摯に受け止め、次にどう生かすかを考えること。
それが、私たち医療者にできる最大の責任だと思っています。
信頼は、一朝一夕には生まれません。
でも、誠実な診療の積み重ねの先に、また誰かの「信じてみよう」が生まれることを信じて。
明日も、診察室でお待ちしています。
それではお大事にどうぞ。
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