これは非常勤で行っている療養型の病院での出来事です。
終末期の人がいよいよを迎えた時です。
病院なのに放っておくのですか
症例

先生、〇〇さんの血圧、意識が低下傾向です

DNRはとっているんですよね?ご家族に危ないかもという連絡をしてください。
DNR
Do not Resuscitateの略。心停止、呼吸停止の際に心臓マッサージや人工呼吸などの蘇生措置を行わないで自然の成り行き任せること。

わかりました
電話

〇〇さんのことなのですが、もうそろそろ心臓がとまりそうです。病院に来ることはできますか

え?そうなんですか、大丈夫なんですか

あとどのくらいで心臓がとまってしまうかはわかりませんが明日を迎えるのは難しいでしょう

わかりました。でもそういうときって何か治療をするのが普通じゃないんですか?
病院なのに放っておくのですか
私も説明したのですがどうしても話が進まず主治医と連絡とってもらい、また改めて説明してもらい事なきを得ました。
病院側とご家族とに終末期医療のずれが生じてしまった状況ですね。
終末期の方に対して延命治療は意味がないもの、むしろマイナスになると考えております。
厚生省よりR4年度 人生の最終段階における医療・ケアに関する意識調査報告書というものが出ております。
その中に終末期に心停止したときの蘇生措置を希望するかどうかのアンケートがあります。
蘇生措置を希望すると答えたのが一般国民が20.7%,それに対して医師は6.0%,看護師は3.7%となっております。
結構な差がありますね。医師と看護師間でも差がでるのは実際に患者さんを診ている時間の差ですかね。
できる限りこの意識の差を埋めていきたいものです。
そもそも療養型の病院に入っている時点で延命措置は難しいのです。人工呼吸器ないですし。
療養型病院 ⇔ 急性期型病院
長期的な医療や介護が必要な患者さんを対象とした病院。リハビリが主であり、自宅に帰れないが施設などにはいられない患者さんが入院している。
入院・転院する段階でご理解・納得しておいてもらわないとならないです。
療養型の病院では入院するときにどんな状態であろうとDNRを最初から条件として提示していることもあります。
もちろん人間いざその場面になると気持ちが変わることも分かっております。
解決策
- 主治医とよく話をしておき、どういった目的で入院しているのかを理解しておく
- 蘇生措置の理解をする
- どうしても納得できなければ別の病院を選ぶ
どんな状況の人でも全力で医療を、とはならないことをご理解ください。
主治医とよく話をしておき、どういった目的で入院しているのかを理解しておく
なんのために入院しているのでしょうか。
積極的な治療は必要ない状況、ないしはできない状況で自宅で過ごせないからでしょうか。
最後だけ頑張るというのもおかしいと思いませんか。
蘇生措置の理解をする
蘇生措置の心臓マッサージをすると多発ろっ骨骨折、胸骨骨折します。
そのくらいしないと全身に血流が回りません。
気管挿管をすると話すことができなくなります。人工呼吸器につないで強制的に呼吸をしてもらいます。
抜いたら呼吸が止まるであろうことが予測されている中で気管挿管をやめることはできません。
それでも望みますか。
どうしても納得できなければ別の病院を選ぶ
どうしても蘇生措置をして希望するようであればできる病院を選びましょう。
ただ受け入れ先はかなり少ないかと思います。
急性期病院の適応ではありませんので大学病院や中核病院にはいられません。
絶対やりたい、というようであれば申し訳ありませんが自宅療養でご自身でやってもらうしかありません。
救急車を呼びつつ心臓マッサージを行ってください。車の免許取得のときに心臓マッサージは会得しているかと思います。
まとめ
終末期の人に医療者としては延命治療は行いたくないのです。
あまりにも意味のないことだと考えているからです。どうしてそう考えるのかはまた別の機会に説明します。
人間いつかは必ず死にます。
その場面に触れる機会が多い医師が延命治療を希望しないのは妥当かと考えます。
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