限界を超えると
強制退院、診療拒否です。
私たち医師は聖職者と言われることはしばしばあります。
看護師さんも白衣の天使と揶揄されることもあります。
無限の優しさと忍耐をもった存在かのように語られることもありますが
私たちも感情のある人間です
多少の無理難題には、できる限り応えようとします。
説明が伝わっていないなら、言い方を変えもう一度話すようにしています。
不安そうな患者さんには、気を配り寄り添っていきます。
でも、明らかに悪意のある言動や、何度注意しても改善されない迷惑行動が繰り返されると、
病院という場ですら、「これ以上は無理です」と線を引かざるを得ません。
もちろん、我々はできるだけ多くの患者さんを救いたい。
でも、一人の過度な行動で、他の患者さんが安心して通えなくなることは本末転倒です。
たとえば、こういったケースがあります。
- 医療スタッフへの暴言・恫喝・人格否定
- 待合室や診察室での大声や暴力行為
- 治療のたびに根拠なく医師を変えさせようとする
- 自分の希望が通らないと他の患者や職員に当たり散らす
- 医療的に必要な説明や同意を一切無視して指示に従わない
- 病院内での盗撮・録音・無断録画の強行
程度によっては一度や二度では、もちろんこちらも目をつぶります。
ですが、これが日常化し、他の患者さんや職員を脅かすようになると、
病院としては「これ以上診ることはできません」という
決断をせざるを得ません。
応召義務違反では?
法律に詳しい方や少し調べるとすぐでてくる医師の応召義務というものがあります。
医師法第19条
診療に従事する医師は、診察治療の求があった場合には、正当な事由がなければ、
これを拒んではならない。
要は患者は診ないといけないという決まりになります。
ただしこれには罰則などはありません。
そしてこの「正当な事由がなければ」がポイントになります。
これには上記のことが当てはまります。
今回の記事とは関係ないですがあとは時間内でも事実上診察が不可能といえる時、
時間外であれば緊急性のないものはお断りすることがあります。
「医療」≠「サービス業」
病院はレストランや美容院とは違います。
「お金を払っているんだから、言う通りにしろ」「俺は客だ」という発想では、
残念ながら通用しません。
医療は、「信頼関係」の上に成り立つ共同作業です。
信頼がなければ、どんな検査も治療も成り立ちません。
そして信頼は、相手への敬意と節度のある態度から生まれるものです。
まとめ
体調が悪くなれば、不安や苛立ちが出るのは自然なことです。
でもその中でも、少しの配慮と、他者への思いやりを忘れないでいただけたら――
それだけで、医療現場は驚くほどスムーズになり、
私たち医療者も、もっと気持ちを込めて寄り添うことができます。
それではお大事にどうぞ。
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