これは大学病院時代のおはなし。
緊急手術をして改善したあとのこと。
できるまで退院できません
症例

ご家族の手術後具合もよさそうなのでそろそろ退院しましょう。

ありがとうございます。

明後日でどうでしょうか。

でも、まだ歩けないですよね。

入院される前からほぼ寝たきりだとお伺いしておりますが。

歩けるようになるまで退院できないです。
それまで入院させてください。
もともと自宅でほぼ寝たきりで介護などを要していた患者さんです。
自宅で見ているのも限界に近かったのでしょう。
これを機にリハビリ、施設へと考えている方は多いです。
もちろん、患者さんの回復を心から願っています。
でも、今回の手術は命を守るための緊急手術であり、急性期の治療が終われば、
あとは慢性期リハビリの領域。いわゆる「慢性期病院」や「在宅医療」の出番です。
入院したまま慢性期病院や施設へ転院するということは可能です。
しかしこれは行き先や時期にもよりますが時間がかかることが多いです。
2週間~1か月程度かかる印象です。
大学病院のベッド数は限られています。
緊急手術を必要とする患者さんが毎日のように搬送されてきます。
私たちはその一人ひとりに全力を注ぎたいのです。
けれど、ある程度の回復を果たした患者さんが「居続ける」ことで、
次に治療が必要な人のスペースがなくなってしまう。
これは、他の命を危険にさらすことにもつながりかねません。
退院とは「追い出し」ではなく、「次のステージへのバトンタッチ」なのです。
医療と介護、それぞれのプロフェッショナルが力を発揮すべき場を、正しく使う。
それが、患者さん自身にとっても、社会全体にとっても、
真の意味での“支え合い”だと私は思います。
「ここでずっと見てほしい」という気持ちも分かります。許されるならば帰れるまで診てあげたいです。
でも、限りある医療資源のなかで、少しずつ前に進んでいただくことが、
次の人を救うことにもつながるのです。

解決策
- 訪問リハビリ・訪問看護の導入
- ケアマネージャーの選定と介護サービスの導入
- 状況により入院や施設へ
訪問リハビリ・訪問看護の導入
ご自宅に理学療法士や看護師が訪問し、歩行練習や体調管理をしてくれます。
病院とは違った、生活に即したリハビリができます。
訪問看護では点滴や床ずれ処置や服薬確認、入院すべきかどうかを相談できます。
ケアマネージャーの選定と介護サービスの導入
ケアマネージャーは医療介護のコーディネーターになります。
各種サービスの選定を行い、つながるお手伝いをしてくれます。
介護保険の申請やサービスの調整は、ケアマネジャーが中心になって行います。
状況により入院や施設へ
「やっぱり家では難しい」となった場合は、地域包括支援センターやかかりつけ医と連携し、
回復期病院やショートステイなどに再度つなぐことも可能です。
まとめ
「入院していれば安心」というお気持ちはよくわかります。
でも、病院での長期療養はむしろ心身の機能を低下させてしまうこともあります。
安心して退院できるように、サポート体制は整えていきます。
まずは、ケアマネージャーや病院の相談員にご相談ください。
それではお大事にどうぞ。
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