これはクリニック外来のお話。
風邪用症状で来院された方のこと。
予防用にください
症例

こんにちわ。今日はどうしました。

昨日から咳がでるんです。

ふむふむ。風邪ですかね。咳が落ち着く薬をだしておきますね。

熱がでると困るので、予防用に熱さましをください。
「熱が出るかもしれないから、あらかじめ薬をください」ということですね。
気持ちはよくわかります。忙しくて来られない日もありますし、安心感も欲しいですよね。
ただ、基本的には、まだ出ていない症状に対して薬を出すことはできません。
特に、診察時に熱がない状態で「熱さまし」を出すのは、保険診療上も医学的にも難しいのです。
かかりつけの子供で熱痙攣などの既往がある場合は予防的に対応しますが、
今回のように「まだ起きていない症状」には保険が適用されません。
薬も当然ながら保険が適応されます。
保険診療は、自己負担3割・残り7割は社会保険料(税金)から支払われます。
もし熱が出なかったら、その薬は使われずに終わりますよね。
使わない薬にも社会保険料が使われることになるのです。
友人に使う「かもしれない」ものを買うためにお金くださいって言われたら誰だって嫌ですよね。
医師も、できる限り今後の経過を予測しますが、未来を100%当てることはできません。
経験を積めば予測の精度は上がりますが、医療者は預言者ではないのです。

解決策
- 市販薬を購入する
- 発熱したら受診する
- 体温計や解熱グッズを備えておく
市販薬を購入する
熱が出たとき、すぐに薬を飲めると安心です。
アセトアミノフェン(カロナールと同じ成分)などの解熱薬は薬局で購入できます。
特に小さなお子さんや持病がある方は、家族の体格や年齢に合わせた用量の市販薬を用意しておくと安心です。
購入時には薬剤師さんに「持病」「普段飲んでいる薬」「アレルギーの有無」を伝えると、より安全に選べます。
発熱したら受診する
熱が出ても軽い症状なら自宅で様子を見られることもありますが、
次のような場合は早めに受診してください。
- 38度以上の高熱が続く
- 息苦しさ、強いだるさ、意識がもうろうとする
- 基礎疾患(心臓病、糖尿病、呼吸器疾患など)がある
- 小さなお子さんや高齢者で急に元気がなくなった
あとはお困りの際には電話ででもご相談ください。
体温計や解熱グッズを備えておく
体温計は、毎回探さずに済むよう、すぐ手に取れる場所に置きましょう。
電池切れや故障もあるので、定期的に動作確認をしておくことが大切です。
また、解熱グッズも揃えておくと発熱時の負担が減ります。
- 冷却シートや保冷剤(首やわきの下を冷やすと効果的)
- 経口補水液やスポーツドリンク(脱水予防に)
- 消化の良い食品(ゼリー飲料など)
事前に準備しておくことで、体調が悪くなったときに慌てず対応できます。
まとめ
病気はいつも突然やってきます。
そのたびに慌ててしまうのは当然のことですが、日頃から少しずつ備えておくことで慌てる場面を減らすことができます。
医療は「今ある症状」に対して行うものですが、患者さん自身が「いざという時の準備」をしておくことで、安心感もぐっと増します。
お互いに無駄を減らしながら、必要なときに必要な医療が届く社会を、一緒に守っていきましょう。
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