早くにできないんですか

患者さん
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これが大学時代の外来。

がんで手術が必要という方のおはなし。

早くにできないんですか

症例

わさび饅頭
わさび饅頭

がんの診断になります。手術が必要になります。

分かりました。

わさび饅頭
わさび饅頭

手術は1か月後になりますね

え?もっと早くにできないんですか。

病気があるのに1か月もおいてしまって大丈夫なのか、という不安であるのはわかります。

がんは時間をおけば進行していく。それは私たちもよく分かっております。

しかしながら、結論をいうとできないんです

理由としては以下が上がります。

  • 他の手術埋まっている
  • 検査が間に合わない
  • 病室の空きがない
他の手術で埋まっている

病院には手術枠というものが設定されています。

手術室の数、手術看護師、麻酔科医師の数で決められております。

この科は月曜日は手術2件まで、火曜日は短い手術であれば3件までといった具合です。

そこに外科医のマンパワーで加えて手術ができるかどうかを考えていくのです。

外来では当然がんなど早くにやらないといけないものはできるだけ早めに、

少し時間をおいていいものはご本人の希望で日程を決めていきます。

1か月後というのはそこまで予定が埋まってしまっているのです。

さすがにもっと前に予約して待っている人を押しのけて手術はできないです。

検査が間に合わない

手術前には多くの検査を行います。

例えば消化器のがんであれば

採血、レントゲン、CT検査、MRI検査、バリウム検査、内視鏡+組織診、心電図、呼吸検査

あたりになります。

そこでまた異常があれば別検査または他の科に精査依頼をします。

採血などはすぐですが他の検査はまた枠があります。

手術よりは予約を入れることはできますが同日にできない検査もあります。

なんだかんだ検査をしていると1か月くらいかかることもあります。

検査をおこたると安全な手術できなくなります。

病室の空きがない

このケースはいままであったことはありませんが可能性はあります。

入院の部屋がなければ当然手術はできません。

特に新型感染症の時期であると部屋制限がかかってくるので不足しがちになります。

できるだけ病室が足りないです、とならないようにベッドコントロールの看護師さんが調整してくれます。

1か月待っても大丈夫なのか

上記がクリアされたところで早くやるのと時間を空けてやるのとどっちがいいのかというと

早くやることにこしたことはないです。

ただしこれは合併症のコントロールなどは除きます。

がんを1か月置いとくとどうなるのか。

確実に進行します。

ただそれが手術、治療に支障をきたすかというとそんなことはありません。

がんがどのくらいのペースで進行していくのか、というのは分かりません。

倫理的に研究できないからです。

がんを治療しないで放置してどう進行していくかなんて命に直結する危ない研究はどこからも許可はおりませんし、

研究はある程度人数がそろわないと正確なデータはとれないです。

感覚的には若い人は進行が早く、高齢者は遅い印象があります。

1か月でがんが進行してしまって手術ができなかったこともあります。

ただ思い返すとそのくらい1か月前の時点でも進行していた状況であり、

いずれにしても予後はよくなかったのかと思います。

手術が早ければ予後が大きく変わっていた、とは考えにくいです。

解決策

  • 納得したうえで待機する
  • 手術枠のキャンセル待ちをする
  • 他の病院への紹介依頼をする

納得したうえで待機する

私たち医師としては、患者さんに「納得したうえで待機していただく」ことが理想です。

焦りや不安は、体力や気持ちにも影響を与えてしまいます。

申し訳ないことですが、それで手術ができなくなってしまう場合は、多くは病気の発見自体が遅かったためであり、私たちの怠慢ではありません。

むしろ、限られた時間をどう有効に使うかが、その後の治療の成果を大きく左右します。

手術枠のキャンセル待ちをする

手術はふとしたことでキャンセルになることもあります。

ご本人の都合や急病などです。

その際には医師から連絡をします。

あらかじめて伝えておいていただければ優先して入れることもあります。

これはまれなことですのであまり過度な期待はしない方がよいです。

他の病院への紹介依頼をする

他の病院であれば早くにやれるかもしれません。

しかし、紹介先がいつ手術ができるかを調べることはできません。

紹介状と検査結果を全てお渡ししますので直接行ってもらうことになります。

その間は手術枠をkeepすることは難しいです。

次の人だって早く手術をしたいですからその枠をやるかやらないか分からない人のためにkeepしておくのは難しいです。

結果としては最初のところでやった方が早かった、なんてことも起こりかねません。

まとめ

がんと告げられた日から手術までの時間は、患者さんにとって不安と焦りが入り混じる日々です。

しかし、その時間は「ただの待ち時間」ではありません。

必要な検査や準備を整え、体調を万全にし、確実で安全な治療へとつなぐための大切な期間です。

私たちも、できる限り早く治療を行いたいというお気持ちに寄り添いながら、最善の準備を進めています。

焦るお気持ちは当然ですが、どうか「治療のための時間」として前向きにとらえてください。

その落ち着きと準備こそが、これからの治療を支える力になるのです。

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