これは大学時代のお話。
終末期の方で転院の話を進めていたときのこと。
あの病院はちょっと。。。
症例

これ以上の治療はなく、あとは緩和治療となります

分かりました

この病院では継続はできないため転院となります。
どこか希望の病院はありますか。

あの病院はちょっと。。。
転院に際して転院先の希望をお聞きします。
あの病院に行きたい、よりもあの病院は嫌だということを言われることが多いです。
選り好みしないで行って欲しい
というのが正直なところです。
都会のようにいくらでも転院先があるようであればいいのですが、
都会から離れると選択肢はあまり多くありません。
あそことあそこは嫌とか言われてしまうと選択肢が急激に減ってしまうのです。
選択肢が減ると転院に時間を要するようになり2-3週間待ちとなることも多々あります。
ではなぜ早く転院をして欲しいのか。
- 緩和ケアに適した体制がある
- ご家族のサポートが受けやすい
- 新しい患者さんの受け入れ
緩和ケアに適した体制がある
大学病院は急性期治療であり緩和ケアには適しておりません。
医療者も緩和ケア部門はありますが一部の医師が精通しているのみで専門とはしておりません。
私もある程度は把握していますが見よう見まねやっているところもあります。
餅は餅屋で。各専門があるものです。
緩和ケアを行っている医師も多くはなく毎日いるとも限らないのです。
ご家族のサポートが受けやすい
大病院は面会時間の制限がかかっているところが多いです。
緩和ケア病棟であれば長時間面会を認めるところも多いです。
新しい患者さんの受け入れ
大学病院は「治療が必要な患者さんのためのベッド」が常に不足しています。
転院が進まないと、次に治療が必要な患者さんが入院できず、
結果的に多くの人に不利益が生じてしまいます。

解決策
- 「なぜ転院が必要か」を必ず確認する
- 希望をすべて伝えるより、優先順位を決める
- 地域連携室を活用する
「なぜ転院が必要か」を必ず確認する
医師や看護師に「どうして転院しないといけないのか」を丁寧に聞いてみましょう。
理由を理解することで「見放されたのでは?」という不安が減ります。
多くは上記の理由になります。
希望をすべて伝えるより、優先順位を決める
あそこは嫌、あそこも嫌ではなく
「自宅から近いところ」「緩和ケアが得意なところ」など希望を絞ると、
受け入れ先が見つかりやすくなります。
地域連携室を活用する
何も自分で探してください、というわけではありません。
どの病院にも病院同士の転院などを担当している部署があります。
地域連携室といったところです。
転院先の情報を持っており、病院間の連絡を取り合う部署になります。
ここが中心となり転院を進めていきます。
まとめ
大学病院では、どうしても「治療中心」の体制になってしまい、
緩和ケアや家族のサポートに十分応えられない場面があります。
そのため、終末期には転院をお願いすることが多いのです。
転院は「見放された」ということではなく、
より穏やかに過ごせる環境を整えるための大切なステップです。
転院は患者さんやご家族にとって不安が大きいものですが、
目的は「最後の時間をよりよく過ごしていただくこと」です。
医療者と一緒に話し合いながら、少しでも安心できる場所を見つけていただければと思います。
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