これは大学病院時代のはなし。
救急外来で入院が必要となったときのこと。
自分のことは自分が一番わかっている
症例

以上の検査結果より入院での治療が必要になります。
今すぐ入院です。

入院しなくちゃいけないのか。帰りたいんだけど。

先ほどお伝えしたとおり、
悪化する可能性が高いので入院したほうがよいでしょう。

いや、いい。
自分のことは自分が一番わかっている。
自分の体の一番の理解者は自分だということですね。
自宅で様子を見て問題が起こらない可能性もありますが
問題が起こる可能性が高い、ないしは致命的になる可能性があるときに入院を勧めています。
一部は正解と思いますが間違いもあります
自分自身の気持ちや痛みの強さ、症状などこれらはむしろ自分しか分からないかと思います。
これが一部の正解です。
間違いとしてはそれ以外の他覚的な情報に関しては我々の方が上手です。
今日鏡で顔はどのくらい見ましたか?5分ですか?10分ですか?
診察を初めてからそのくらいは見ています。
お腹はみましたか?背中はみましたか?足はみましたか?
自分では分からないところを調べ他覚的にわかるようにし科学をするのが医療なのです。
- 採血で数値化
- Xp、エコー、CTで画像化

採血で数値化
例えば「倦怠感がある」と言われます。倦怠感がわかるのはご本人のみです。
でもご本人も何が原因かは分かりません。だから病院に来ています。
肝機能が悪くないか、糖尿病がないか、隠れた感染がないか、腎臓が悪くないか。
これはご本人に判断はできませんし、医療者としても診察で確定は難しいです。
採血で初めてわかることです。
Xp、エコー、CTで画像化
採血を行って感染があることが分かった。ではどこの感染なのか。
採血や尿の検査で判明することもありますがあとは画像検査になります。
肺炎や腸炎がないのか。その原因はなんなのか。
おそらくはこの検査以外でご自身の内臓を見たことはないでしょう。

解決策
不安や希望を伝える
帰宅したい理由など本音をお伝えください。
解決案を一緒に考えましょう。そして治療方針をまた一度検討しましょう。
自宅療養で有事の際には入院、毎日通院などで対応ができることもあります。
入院の必要性をもう一度聞く
入院の必要性のレベルもさまざまです。以下はあくまでも私感でありますがご参考ください。
- レベル1経過観察
診断がはっきりしない。経過をみつつ診断をする。
- レベル2急変、悪化の可能性低
自宅でも治療できるが急変対応できるようにしたい。
- レベル3急変、悪化の可能性高
状態の悪化に対して適時対応しないといけない。
- レベル4自宅で治療できない
持続的な治療が必要であり自宅での療養は不可能。
- レベル5死の危険性
早期に対応しないと死亡する
レベルが高ければそれだけ入院の必要性があがります。
レベル1~3ならば自宅での療養も可能です。その分リスクは高いです。
家族に相談しましょう
帰宅したい理由と合わせて家族に相談しましょう。
そのくらいであればご家族が解決してくれる、都合をつけてくれる。
帰宅理由よりもご本人の体が心配であると言ってくれることもあるでしょう。
入院のメリットを整理する
いまいちど入院必要レベル確認して自分がどのレベルなのかを確認しましょう。
基本的には体に関しては入院した方がメリットが得られるかと考えます。
まとめ
「自分の体は自分が一番わかっている」
これはさし伸ばした手を払いのけ、協力体制を拒否していることになります。
治療を受けるうえで大切なのは、「一方的に言われたから従う」ことでも「自分の考えだけで決める」ことでもありません。
患者さんが感じている症状や不安、生活上の事情と、医療者が持つ検査データや経験、専門的な視点――それぞれを重ね合わせてこそ、本当に納得できる治療が選べます。
私たち医療者は、患者さんの声を尊重しながら、見えない部分を検査や診察で補い、できるだけ安心できる道を一緒に探していきます。
どうか一人で抱え込まず、協力しながらより良い治療を進めていきましょう。
それではお大事にどうぞ。
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